不当判決!京都地裁・第一審の判決文の全文をアップ。

注:判決文中に出てくる個人名は基本的に仮名(A、B、C、D)にしてあります。また、一部省略している箇所もあります。

江見健一裁判官は、撤去されることに抗議して自転車の荷台を掴んだ行為だけではなく、相手が市の職員であることを確認する過程で一瞬市章をつまんだ行為(裁判の中でも明らかになった通り、1秒程度の、ほんの一瞬のことです)までも公務執行妨害罪を構成するに足る「暴行」だと認め、Aに懲役6ヶ月(!)の判決を言い渡しました。Aの抗議にまともに耳を貸そうとせずに高圧的な業務を続けていた京都市に対して、自転車の荷台と胸の市章を一瞬つまんだだけで懲役6ヶ月…ありえません。

さらに、普通は、未決勾留期間(拘置所に二ヶ月間放り込こまれていた期間)が刑から相殺されることが多いのですが、そういうことも一切ありませんでした。これでは、未決勾留期間も含めて実質刑罰として与えられるべきなのだと、裁判官が宣言しているに等しいです。拘置所2ヶ月、留置場1ヶ月入れられていた期間も含めると、裁判所はAに対し、実質9ヶ月間幽閉されていいのだと言っているようなものです…。

今回の一連の逮捕・裁判は、そもそも公務執行妨害を構成するような要件に満たないような事件であるにも関わらず、京都市の行政に対しての直接抗議する行為である点がふまえられ、罰を与えようという政治判断の下、起訴されたものだといえます。それは、現場で抗議の声を上げることそのものを裁き、罰を与えようという性格のものです。その不当な政治性は明らかです。判決の結論は「こいつは反省してないから、厳罰に処すべきだ」ということでした。めちゃくちゃな判決です。

あらためて怒りをおさえることができません。

判決を出した裁判官・江見健一と起訴した検察官・中井優介に対し、強い抗議の意志を表明します。
 
 
裁判は、Aが控訴したため、控訴審が始まります。控訴審で棄却されなかった場合、高裁での裁判が始まるということになります。

控訴審は、2013年4月23日14時から、大阪高等裁判所、刑事第1001号法廷(10階)にて。

今まで京都だった裁判の舞台が大阪に移ること、また平日の昼間だというのもあり、なかなか人は集まりにくいだろうな、と予想されます。社会的に注目が集まっているのだということを裁判所に示すために、一人でも多くの人に集まっていただきたいです。…みなさん、よろしくおねがいします!
 

平成24年 (◯)第◯◯◯◯号 公務執行妨害被告事件

判決

        被告人   A
        国選弁護人 
        検察官   中井優介

主文
 
1 被告人を懲役六ヶ月に処する。
2 この裁判確定の日から2年間、刑の執行を猶予する。
3 訴訟費用は、被告人の負担とする。
 
 
理由
 
第1 犯罪事実
 被告人は、平成24年8月26日午後2時10分頃、京都市左京区田中上柳町25番地3京阪出町柳ビル南西側歩道上において、京都市建設局土木管理部自転車政策課嘱託職員B(当時63歳)及び京都市からの委託により嘱託員の指示に従い放置自転車の撤去作業に従事していた作業員C(当時44歳)らが、京都市自転車等放置防止条例に基づき自転車等撤去作業強化区域における放置自転車の撤去作業に従事していた際、Cに対し、同人が左手に持っていた撤去時点車の荷台を掴んで押し下げて路上に下ろさせるなどした上、Bに対し、「これ、京都市のマークやろ。」などと言いながら、同人の着衣の左胸部分を右手指で摘んで揺する暴行を加え、もって、同人らの職務の執行を妨害した。


第2 証拠

 被告人の公判供述
 証人Bの供述
 写真撮影報告書
 捜査報告書


第3 事実の認定

 1 争点等
 弁護人は、被告人が自転車の荷台を掴んだ行為は公務執行妨害罪にいう暴行に当たらず、被告人がBの着衣を摘んだ行為は、同人の公務を妨害する意図でされたものではない上公務執行妨害罪にいう暴行に当たらない旨主張する。

 2 本件の経過

  (1) 証拠によれば、本件の経過は次のとおりであると認められる。
 平成24年8月26日午後1時50分頃から、京阪出町柳ビル付近において、京都市の嘱託職員3名及びその委託を受けた業者の従業員約10名が、放置自転車の撤去作業をしていた。京都市の嘱託職員Bは、午後1時55分頃、鴨川公園付近において、自転車4台の撤去作業をしようとしたところ、男性から声を掛けられたことから、同自転車の移動を同人に求めた後、移動しようとしていた。被告人は、その後、Bに声を掛け、「京都市は無料駐輪場も作らずに自転車を撤去するのはおかしいやないか。」と言い、Bが「駐輪場はそこにあるやろうが。」と言い返すと、被告人は「あれは有料やないか。」と答えた。被告人は、移動しようとしていたBに対し、その後方から追いつき、「お前、京都市の役人やろう。名前を言え。」と言い、自転車撤去が不当であることを述べるなどし、付近にいた嘱託職員Dが両者の間に入ったものの、両名は口論しながら東方へ移動した。作業員Cは、出町柳ビル西側路上において、放置自転車の撤去のため、両手に自転車を1台ずつ持ち上げて歩いていたところ、被告人は、Cが右手に持っていた自転車に手を掛けるなどし、Cは、右手に持っていた自転車を路上に下ろして付近に置いた上、左手の自転車を持ったまま歩き続けた。被告人は、Cに対し、同人が左手に持っていた自転車の荷台部分を手で掴んで地面に向かって押し下げ、「勝手に持って行くな言うてるやろう。」等と発言し、Cは、自転車が腹部付近に引っかかったため前のめりになって歩行を制止され、同自転車を路上に置いた上で歩き続けた。Dは、その頃、Bの要請を受けて、警察に電話をした。被告人と付近にいたDが言い争いになり、Bもその付近にいたところ、被告人は、Bが着用していた作業着の胸ポケットからはみ出して入れられていた書類を押し下げた上で、作業着の胸ポケットより上の部分にあった京都市の市章を右手の指で摘み、「これ、京都市のマークやろう。」と言いながら、前後に揺すった。

  (2) (1)の認定の根拠
 被告人は、当初のBとのやり取りからCが右手に持っていた自転車(以下「右手の自転車」という。)への接触までについて、個々の状況における被告人及びBらの発言状況等に関し若干の相違があるものの、事柄の経過についてはBの供述と一致した内容を供述する一方、Cが左手に持っていた自転車(以下「左手の自転車」という。)を押さえたことは覚えておらず右手の自転車を押さえたこととBの作業着の市章を摘んだ行為が記憶のすべてであり、Bの作業着の市章を摘んだ行為と自転車を押さえた行為との前後関係は覚えていない等と供述する。
 被告人が左手の自転車を掴んで押し下げた点については、Bが供述するところ、同人の供述は、被告人とのやり取り等の状況については自己に有利に発言している懸念があるから慎重に吟味すべきところがあるものの、被告人が左手の自転車を掴んだ以前の経過については被告人と一致する内容であること、右手の自転車を押さえた状況を見ていなかったと述べるなど記憶にない点はその旨明示しながら供述していることからすれば、被告人が右手の自転車を掴んだ事実があったという点についても信用することができ、その述べる事実を認めることができる。

 3 判断
 被告人が左手の自転車を掴んだことを契機としてCが左手の自転車を路上に置いたことは明らかであり、これは被告人から右手の自転車を掴まれて置いた後のものであるから、Cが左手の自転車を路上に置くことを余儀なくされたものであることは優に認められる。したがって、被告人が左手の自転車を掴んだ行為は、公務を妨害するに足りる程度の不法な有形力の行使というべきであり、公務執行妨害罪にいう暴行に当たる。
 被告人がBの着衣の市章を摘んで揺すった行為は、右手の自転車を掴んでその運搬を静止した行為の後、嘱託職員Dと口論になった際にその付近にいたBに対して行われたものであって、これがBらの自転車撤去作業を妨害する意図で行われた行為の一部であることは明らかであり、そのような経過の中で行われたものであること及び当時の状況に照らすと、それ自体公務を妨害するに足りる程度の不法な有形力の行使というべきであって、公務執行妨害罪にいう暴行に当たる。


第4 適用法令
    罰         条  刑法95条1項
    刑         種  懲役刑
    刑 の 執 行 猶 予  刑法25条1項
    訴  訟  費  用   刑事訴訟法181条1項本文


第5 量刑の理由
 被告人は、従前から京都市の自転車撤去政策に強い不満を抱いていたところ、自転車撤去作業を目にしたことから、作業員が撤去するため手にしていた他人の自転車に手をかけたり、現場指揮をしていた市の嘱託職員に対してその着衣を摘んで揺する等したものである。本件公務が現業の業務であってその執行の妨害を自ら排除し得るような権力的公務でないことは一見して明らかであるのに、自己の市政に関する意見を実現するために実力をもって妨害行為に出た点で悪質であり、現実に自転車の撤去作業が中断し公務への支障が生じた結果も見過ごすことができないところ、被告人は自己の正当性を訴えるのみでその悪性に向きあおうともしていないから、被告人の刑事責任には重いものがある。
 そうすると、本件における暴行は強いものではないことと、被告人に前科が無いこと等被告人に有利に解すべき事情を考慮しても、体刑は免れず、被告人については、主文掲記の刑に処した上、今回に限り、その執行を猶予するのが相当である。
 (求刑:懲役6ヶ月)
 
 平成24年12月19日
   京都地方裁判所第2刑事部
   
   裁判官 江見健一