抗告の結果 - 検察の抗告が通りました

8月26日の不当逮捕からもう2か月半あまり…

京都地裁が、Aの保釈許可決定をしたにもかかわらず、検察が抗告(高裁への不服申し立て)をしていましたが、11月7日に大阪高等裁判所が検察の抗告を認め、京都地裁の決定を取り消し、保釈請求が却下されました。

理由は、Aが捜査段階で取り調べに応じず、裁判のなかでもどのように弁解や反証をするのかわかっていない。それらの内容によっては、検察が追加で証拠を出すこともある。また、逮捕時には複数名が逮捕を妨害し、第一回公判では傍聴席から拍手や「がんばれ」という発言があった。それらを踏まえて考えると、Aが関係者と通謀して罪証の隠滅をする可能性があり、その実効性も否定できないから、刑訴法89条4号に該当することが認められる、そうです。

検察官による起訴内容の立証はいったん証人尋問で終わっていますし、そもそも現行犯逮捕なのですから、隠滅する証拠自体がないでしょう。現行犯逮捕時にピクニックを打ち壊されて現場にいた者が逮捕への抗議をしたり、逮捕の理由を説明させようとしていたことも罪証隠滅のおそれの理由にされていました。あきれて言葉も出ません。


逮捕後にAは取り調べを受けることを拒否しました。突然の逮捕への怒りもあったし、被害届を出した市職員たちの言ってることが、あまりにも事実とかけ離れていて、このまま取調室に連れていかれるのは危険だったからです。

取調室は嘘でもなんでもいいから自白させて、供述調書という重要な証拠をつくるための密室空間です。

取り調べを拒否するAは勾留され続け、それに耐えて逮捕当日に市職員たちが言っていたことと、証人尋問での証言がまったく違うことが法廷で公然化された時、本当にがんばったと思いました。

市職員らの聴き取りをもとにした公訴事実では「着衣の上から左胸を右手でつかんで揺する等の暴行を加え」たとされていますが、証人尋問では「左胸についていた市章を2、3本の指で1〜2秒つかまれた。」「一瞬痛かったので、ヒフも一緒につままれたと思う」と証言していました。ぜんぜん違うじゃないですか。

今回の事件に限らず、黙秘することや取り調べを受けないことは、刑事裁判が自白中心で判決を出されていることを考えれば重要なことです。しかし被逮捕者が取調を拒否し、事件について何も明らかにしていない状態であれば、長い長い監禁が続く日本の刑事司法はどうなっているのでしょうか。勾留期間は当然細かく管理され、自由を制限されています。さらに、勾留が解けたあとの生活も問題です。収入もない中で、生活や人間関係を立て直していかなければならない。

ましてや今回のような抗告理由が認められると、裁判が終わるぎりぎりまで勾留されることが嫌なら取り調べに応じるしかなくなります。

最近でも、無実の罪で逮捕起訴、あげく、虚偽自白を得ての処分まで至った事件がありました。
遠隔操作ウイルス事件

もちろん、一刻も早くAの身柄を解放しろというはありますが、刑事司法の実態から考えても、今回の抗告が認められたことは看過できません。

もはや監禁のための監禁というのが実態ではないでしょうか。

今回の大阪高裁の決定に強く抗議します。